松岡タカノリのレジリエンス伝道日誌

日々是レジリエンスNo.43‐不適切保育はなぜ起きるか?“絆ホルモン”オキシトシンのダークサイド

こんにちは。レジリエンストレーナー、ポジティブ心理学コーチの松岡タカノリです。

この「3つのよいことブログ」では、ポジティブ心理学や「3つのよいこと」ワークを基にした、子育てや暮らしに役だつ情報を投稿してまいります。

最近、オンライン講座やclubhouseの活動などで、ブログの更新がおろそかになっていました。本当にすみません。

不適切保育 10年で120件!

2月5日のメディアの報道で、2013年度以降の約10年間に、虐待などの不適切保育を理由とした園側への行政指導や処分が、37自治体で120件に上ると報じられました。半数は非公表で、実体はもっと多いと予想されます。

最近、静岡県や富山県の保育園で、園児の虐待が報じられたことは記憶に新しいと思います。保育士の女性3名が逮捕されましたよね。すぐに処分保留で釈放されたようですが、テレビではかなりショッキングに報じられました。

真面目な人ほど虐待をしてしまう

逮捕された保育士3名の女性、本名も顔写真も報じられてしまい、少し同情してしまいます。このため、いじめ、虐待の連鎖が起こってしまうことを懸念します(実際ネットでは起こっていますね)。

おそらく多くの方は、保育士の写真を見て、

「一見、虐待をするように見えないけど、心の中はとても汚れて日ごろから子どもをいじめているのだろう」とか、

「おそらくこの女性たちは、自分の子どもの頃、やはり虐待を受けた被害者でそれが繰り返されたのだろう」

と想像された方も多いかと思います。

虐待を行ったくだんの保育士の日ごろの行動はわかりませんので、これは私の想像ですが、

おそらくこの保育士の方は、普段は仕事に真面目で幼児の保育にも情熱を傾けていたのではないかと思います。預かっていた子どもにも愛情を注いでいたのではないかと想像します。

実は、そのような真面目な人ほど、愛情深い人ほど、いじめや虐待をしてしまう場合が多いのです。

“絆ホルモン”オキシトシンがいじめを助長する!?

私たち人間は、男女問わずオキシトシンと呼ばれるホルモンを分泌します。

オキシトシンは、手を握る、肩をポンと優しくたたくなどのスキンシップをとったり、名前を呼び合ったり、目をみつめあったりすると分泌されます。分泌されると、相手への親近感、信頼感が生まれ、心理的精神的ストレスを軽減します。

オキシトシンは、愛する人を見つけたり、仲間をつくったりするには欠かせないホルモンであるため、「愛情ホルモン」とも呼ばれます。生物としてのヒト(ホモサピエンス)は、一人では生きて行けないので、共同社会を構築して生きていくには、オキシトシンは不可欠なのです。

オキシトシンは男性よりも女性の方が分泌量が多いと言われます。

オキシトシンは「愛情ホルモン」、「絆ホルモン」なので、分泌が多ければ多いほど良いものではありません。分泌が多くなると、ダークサイドな負の側面が見えてきます。

オキシトシンは、共同社会作りに欠かせない一方、オキシトシンが仲間意識を高めてしまうと、「妬み」や「排外感情」を高めてしまうというネガティブな作用があるのです。

「可愛さ余って憎さ百倍」といったことがオキシトシンの分泌で起こってしまいます。

仲が良い集団、規律意識の高い集団ほどいじめが起きやすい!?

心理学的な調査では、仲が良いほど、規律意識が高い集団ほど、集団内でいじめや虐待が起きやすいと言われています。

規律意識の高い組織とは、集団内の規律、決まりを守らなければならないという気持ちの高い人たちの集まった組織ということです。

規律意識が高ければ、その決まりを守っている集団は良い集団で、その決まりを守る人は良い人になります。それらの人たちはとても仲良くなるでしょう。一方で、決まりを守らない、または事情があって守れない人は、集団の目的や和を乱す「アウトサイダー」とみなされます。

そのようなとらえ方がエスカレートしていじめ、虐待につながっていきます。

つまり、オキシトシンという愛情ホルモンによって仲間がつくられ、関係が強化されます。すると、強化された仲間の関係(集団)内では、集団を守るために規律意識が高まります。その高まりが、一部のアウトサイダーを許さないという、オキシトシンの絆を深める作用が反対に働き、仲間意識を高めるためにアウトサイダーをいじめ、虐待、制裁(サンクション)をして排除し、仲間を強固なものにしようという動きを促してしまうのです。

このような共同社会の規律を守るためのいじめや制裁は、心理学的には向社会的行動といわれています。反社会的行動ではなく、社会を保つための行動ととらえられるのです。いじめや虐待を行った加害者が、よく「いじめている意識はなかった」とコメントするのは、このようなことからきます。加害者当人は、悪いことをしている意識はまったくなく、むしろ集団を守るための正しい行動をしていると認識しているのですから。

このような向社会的行動は、真面目な人ほど行いやすいです。つまり、私たちは、誰しも、いじめ、虐待、制裁の加害者になる可能性があるということなのです。

オキシトシンのダークサイドを防ぐには、レジリエンスとメタ認知力の強化!

では、共同社会を守るためのいじめや制裁は向社会的行動だし、誰しも起こしうるものなので、仕方がないのかと放置してはいけません。

陰湿で悪質ないじめや虐待、制裁を許してはいけません。また、発生を未然に防ぐ方法はいくらでもあります。

まずは、このような集団内におけるオキシトシンの負の側面の現象、メカニズムを知ることです。それは集団を率いるリーダーに限らず、集団に属する人々全員が知るべきです。そして、集団内のすべての人が、いじめ、虐待、制裁の加害者にも被害者にもなる可能性があると認識することです。

そして、それらを知った上で、集団内のお互いがセンサーとなり、

「これはオキシトシンのダークサイドからくる虐待よね?」と、勇気を持って気づき、報告することです。それには、個々人のレジリエンスの向上、レジリエンスの中に含まれるメタ認知力(物事を客観的にとらえる力)の強化が不可欠なのです。

桜の前で抱き合う姉妹

すこし重たいテーマのブログでしたので、せめて可愛らしい女の子姉妹の写真で今回のブログのエンディングとさせていただきます。

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